冬の寒い朝、キッチンに立つとシンクの流れがいつもより悪い。そんな経験はありませんか。実は、冬は一年の中で最も排水溝の詰まりや逆流トラブルが多発する季節です。その主な原因は、私たちの食生活に欠かせない「油」と、厳しい「寒さ」の組み合わせにあります。気温の低下が、目に見えない排水管の中で、静かに、しかし確実に詰まりの原因を育てているのです。 私たちの家庭から出る排水、特にキッチンの排水には、調理で使った肉や魚の脂、炒め物や揚げ物の油分が大量に含まれています。これらの動物性・植物性の油脂は、温度が高い状態では液体ですが、冷えるとラードのように白く固まる性質を持っています。冬場は、外気温だけでなく水道水の温度も夏場に比べて大幅に低下します。そのため、温かい状態で流されたはずの油分が、冷たい排水管の中を流れていく過程で急速に冷やされ、管の内壁にバターのようにべったりと付着してしまうのです。 この一度こびりついた油の層は、非常に厄介です。粘着質であるため、後から流れてくる細かな食材カスや洗剤の溶け残りなどを次々と捕獲し、雪だるま式に大きく成長していきます。これが長期間繰り返されることで、排水管の内部はまるでコレステロールが溜まった血管のように狭くなり、ある日突然、水の通り道を完全に塞いでしまうのです。その結果、行き場を失った排水が、家の中で最も低い位置にある排水口からゴボゴボと音を立てて上がってくるという、最悪の事態を招きます。 この冬特有のトラブルを防ぐために、今日からできる簡単な予防策があります。それは、定期的に配管を「温める」ことです。週に一度でも構いません。キッチンのシンクに栓をして、給湯器で設定できる40度から50度くらいのお湯を溜め、それを一気に流してみてください。この「お湯通し」は、配管の内壁に付着し始めた初期段階の油汚れを溶かし、固着する前に洗い流してくれる効果があります。ただし、熱湯は塩ビ製の排水管を傷める原因になるため、必ず給湯器で設定できる温度のお湯を使いましょう。 排水溝から水が上がってくるという深刻な事態は、冬の寒さが引き金になることが少なくありません。気温が下がる季節こそ、見えない排水管への少しの思いやりが、快適で安心な暮らしを守る鍵となるのです。
冬に多発する排水溝の逆流、原因は気温の低下